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高森明勅
2022.7.13 08:00皇室

天皇・皇室をめぐる基本用語、「権威」と「権力」の端的な違い

天皇・皇室をめぐる議論でしばしば登場する
用語として「権威」と「権力」という言葉がある。

しかし、漠然としたムード的な用い方が多く、
両者の端的な違いがしっかりと整理されていない場合も見かける。

国家統治の場面に限定して、両者が主に対照的に語られる
場合の違いを、ごく簡単に述べると、およそ以下のようになるだろう。

〇他人を外形的な力(警察・軍隊など)で従わせるのが「権力」。

〇他人を本人の内面的な同意や納得によって従わせるのが「権威」。

これに対し、真に「権威」として同意や納得に足るだけの
内実を備えているかどうかを、主体的・理性的に
吟味・検討することなく、「権力」をそのまま
“権威”であるかのように受け止め、盲目的・思考停止的に従う
(又、従わせる)のが「権威主義」だろう。

従って、「権威主義」は「権威」を尊重する立場ではなく、
逆に“エセ権威”を「権力」的(!)に人々に押し付ける
(又、その“権力的押し付け”を無批判に受け入る)態度と言える。

あるいは、社会において真の「権威」が不在であったり、
隠蔽されていたりする場合に“のみ”登場するのが「権威主義」である、
と言ってよいかも知れない(真の権威を、それに相応しく尊重することは、
決して「権威主義」では“ない”ので誤解のないように!)。

だから伝統ある君主制が滅んだ後に、
“エセ権威”を振りかざした独裁者が現れて
「権威主義体制」を築くのは、ある意味で必然とも言えるだろう。

【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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